ソニーグループ株式会社

宇宙産業へ参入したきっかけ

-宇宙産業へ参入したきっかけを教えてください

中西:もともと宇宙は私たちにとって魅力的な領域でした。ソニーはエンジニアが多い会社であり、かつ宇宙に携わることへの情熱を持つ社員がたくさんいたからです。

参入のきっかけとなったのは、JAXAが民間の参入をサポートする枠組みができたことが大きな要因で、2017年頃、社内の有志で宇宙で何かできないか話が始まりました。

2020年に「宇宙エンタテインメント準備室」という組織が立ち上がったのが、このSTAR SPHEREプロジェクトの本格的な活動のスタートです。現在は人工衛星を開発して打上げ、運用するところまで来ました。

-宇宙エンタテインメント準備室のメンバーはどのように召集されたのでしょうか

関根:宇宙エンタテインメント準備室のメンバーは社内公募で集まりました。私も公募を見て参画した一人です。ちなみにその前はモバイル関連の部署に所属していました。

我々2人は専任として活動していますが、宇宙エンタテインメント準備室に所属するメンバーの多くは、他の部署との兼業で参画しています。

ソニーには、本来の担当業務を続けながら、業務時間の⼀部を別の仕事に充てることができる制度があるのですが、それを活用して少しでも宇宙の仕事に関わりたいという社員がたくさんいます。

-関根さんは昔から宇宙事業に関わりたいと思っていたのですか。

関根:はい。私は宇宙に携わりたいと思っていて、SPACETIDEに参加している宇宙系の企業もたくさん調べていました。今後のキャリアを考え四季報を読んでいたときに宇宙業界が盛り上がっていることを知りました。
しかし宇宙業界の現状の投資割合を見ると9割がインフラへの投資、BtoB向け産業への投資であり、そのような場でどのようにソニーの強みであるエンタテインメントなどのBtoC向けビジネスを広げられるかを考えて、それにチャレンジしていきたいと考えるようになりました。

現在の活動内容

-現在の活動内容を教えてください

中西:私たちは本プロジェクトで宇宙をすべての人に身近に感じてもらい、ともに「宇宙の視点」を発見していくということを目指しています。

その一環として、東京大学との共同研究で超小型人工衛星「EYE」を打ち上げました。EYEにはソニー製のカメラが搭載されており、宇宙や地球を自由に撮影できます。まるで宇宙にいるかのような感覚や、新しい視点で地球と宇宙を繋げる体験を皆さんに味わっていただきたいと思っています。

ただ、残念ながら姿勢制御をしていた機能の一部に不具合が生じてしまい、思い描いていたような撮影や動作ができなくなってしまいました。
現在は磁気トルカとリアクションホイールという機能を組み合わせることで解決策を模索しており、姿勢の制御がある程度できるようになっています。

-なぜ宇宙の視点を発見するプロジェクトが始まったのでしょうか

中西:会社のパーパスには、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」というものがあります。私たちは、このパーパスのもと、様々な仕掛けを施し、皆さんに宇宙感動体験をお届けしたいと考えています。

現代社会は、ネガティブなニュースに溢れています。そこで私たちは、社会全体が明るい気持ちになるにはどうすればよいかというポイントから議論を始め、例えば「皆さんに上を向いてもらおう」という話をしていました。

星空を見上げることはもちろん、宇宙を身近に感じ、宇宙を通して物事を捉えてみることで、普段私たちの身近にあるもの、ことの新しい意味や価値を発見しアップデートできれば、毎日の生活が豊かになるのではないか。そんな思いから今回のプロジェクトが立ち上がりました。

宇宙から撮影された画像は既に様々な形で提供されていますが、その写真だけで心が動かされるかというと、我々はまだ十分ではないと感じています。ソニーだからこそ提供できる形で、みなさんに宇宙と繋がる感動を味わっていただけるように、日々検討を重ねています。

-STAR SPHEREは、今後どのようにプロジェクトが進むのでしょうか

中西:先ほど申し上げたように技術的な問題が発生し、当初想定していた、誰もが自由自在に衛星を操作して撮影を行うという体験の提供はできなくなってしまいました。不思議に思うかもしれないですが、これをネガティブにとらえているメンバーはそれほど多くありませんでした。

今回の故障があったからといって、我々のミッションである「多くの人に宇宙を通して感動体験を提供する」ことまでできなくなったわけではないからです。
撮影し取得できる写真の数量や、アングル操作の自由度などに制約ができてしまったわけですが、そのような衛星の機能に依存しない領域にも、我々が提供できる価値はたくさんあると考えています。

人工衛星が思ったように動かなくても、エンタテインメントの力を駆使してみなさんに楽しんでいただくにはどうしたら良いのか?その解決の糸口を手繰り寄せるために日々試行錯誤しています。

関根:弊社には、過去には絶対に売れないと言われながら大ヒットしたウォークマンの開発などもありますし、難易度が高いことへのチャレンジを応援する文化のようなものがあるように感じます。そういった面でも、技術的・ビジネスとしてのチャレンジが求められる宇宙業界との相性は良いのではないかと考えます。

SPACETIDEへ協賛を決めた理由

-今年もSPACETIDEへ協賛いただいた理由を教えてください

関根:実は、SPACETIDEへの協賛を決める際は少し悩みました。
ここまでポジティブなことばかりお伝えしてきましたが、SPACETIDEのスポンサーを検討する時期と衛星に不具合の兆候が見られたタイミングが重なっており、本音ではスポンサーになることに不安を感じていたことも事実です。

しかし、先ほど申し上げたようにソニーという会社は挑戦し続ける文化がありますし、何より挑戦し続けてきた2年間は決して無意味ではなかったと信じています。

想定通りに進まないことも多いですが、それもまた宇宙に取り組む醍醐味であると、多くの応援してくださる方々の声にも励まされ、協賛を決めました。

-悩んでいた時期にも関わらず、なぜ協賛を決めていただいたのですか

関根:困難な状況で下を向くのではなく、上を向く姿勢を示したかったからです。このような状況の中でも我々なりの宇宙の楽しみ方を発表するということ、それが私たちの意思表示です。

この意思表示をアジア最大の国際宇宙カンファレンスで発表することで、我々の覚悟を多くの方に知ってもらいたいと思ったからです。

SPACETIDE2023に参加する方へのメッセージ

-当日SPACETIDEに参加者する方へメッセージをお願いします

関根:先日IAC(国際宇宙会議)に参加して、宇宙は米国が圧倒的に進んでいるという印象を受けました。しかし、アジアの中ではまだ日本に勝機(商機)があるということも同時に実感しました。日本が今後勝負できる「産業としての宇宙」に、ソニーならではのテクノロジーやエンタテインメントの領域で貢献していきたいと思います。

宇宙を楽しむ企業=ソニー
として皆さまに覚えていただけるよう

これからも挑戦して参りますのでぜひ期待していてください!

中西:プロジェクトの進捗やEYEの最新状況など様々な発信を継続していますので、今後の展開を楽しみにしていていただけると嬉しいです。

引き続き、宇宙へのチャレンジとEYEを活用したサービスの検討をしていきたいと思いますので、ご一緒できる機会がある方はぜひお声がけください。

公式サイト:https://starsphere.sony.com/ja/
Twitter:https://twitter.com/STARSPHERE_Sony

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