三井住友海上火災保険株式会社

現在の活動内容

-あらためて現在の活動内容を教えてください

土屋:私たちは2023年4月に新たに設立された宇宙開発室で働いています。これまでは宇宙に特化した組織はありませんでしたが、宇宙ビジネスが急速に成長している中で世の中のトレンドを把握し、ニーズに合った保険を提供するために専門組織を立ち上げました。

舩越:従来の宇宙保険は政府主導の大型ロケットや人工衛星の事故時に補償する「エスタブリッシュスペース向け」の商品でした。しかし、最近では革新的なアプローチで宇宙を開拓するスタートアップや異業種企業の参入など、従来の保険では対応できないミッションが次々と登場しています。これら新規プレイヤーの活動を保険でどのようにサポートするかが、私たちの今後の重要な使命の1つです。

-今後の宇宙データの活用について教えてください

土屋:従来は保険本来の機能である、事故発生後の経済的補償に焦点を当てていましたが、いまは、防災や減災といった補償前後のソリューション提供にも会社全体として力を入れています。そしてそこに宇宙技術を活用できないかということを考えています。たとえば、衛星データの活用によって事故を未然に防ぐことや、事故発生後の迅速な情報収集による迅速な保険金支払い、さらにはこれまでになかった新しい地上/宇宙ビジネス向けの保険商品の企画検討などが出来る可能性があります。

舩越:衛星データの活用は今後のデジタルトランスフォーメーションや情報社会においてどのように活かされるのかを考える必要があると思います。

-宇宙ビジネス支援ではどのようなことをしているのでしょうか

土屋:社内、社外へ両軸で支援を行っています。

まず、社内への支援としては宇宙ビジネスがこれから大きくなることが分かっている一方で、社員全員が宇宙を実際のビジネスとしてイメージすることが難しいところがあります。

ただ、宇宙保険を取り扱う会社として発信している以上、社内の宇宙ビジネスのリテラシーを高めていくことが必要だと考えています。
実際に全国の営業所では衛星事業者様からの保険の引き受け相談もあり、宇宙保険に関する技術、知見を活かした当社社員の営業支援等を行っています。

次に、お客様に対する支援では、主に従来の宇宙事業者様への支援に加えて、宇宙スタートアップへの「CVCや弊社からの資金面での支援」「人事労務や就業規則作成などのお悩みに対する経営サポート」「宇宙事業者様特有の課題解決や新しい支援メニューの開発」などを行っています。

宇宙保険とは

-そもそも宇宙保険とはどのようなものでしょうか

舩越:宇宙保険は現在提供されているもので「打上げ前保険」「打上げ保険」「軌道上寿命保険」「宇宙賠償責任保険」の4つの種別があります。
詳しくは➡参照https://www.ms-ins.com/special/space/

また、月に物を輸送する際の損失をカバーした「月保険」という商品を最近リリースしたり、JAXAとともに、来る有人宇宙旅行などの領域をカバーする「宇宙旅行保険」の共同開発も実施しています。専門的な宇宙飛行士向けではなく一般の人々に向けた宇宙旅行などの保険ニーズを基にデザインする必要があります。

土屋:宇宙保険は皆さんにとって身近な自動車保険や火災保険とは違い、ニッチな分野なので保険会社も世界で40社程度しか扱っていません。

また、打上げ失敗といった巨額なリスクを、保険会社が別の保険会社に一部のリスクを転嫁する再保険という制度を活用して業界全体で宇宙事業を支えあっています。

私たちは保険を設計するにあたり、事業者様から衛星やロケットの技術情報を提供いただいたうえで、ミッションの意義や難易度、リスクを理解し、事業者様にとって必要な補償や条件等を定めており、宇宙保険を提供することで宇宙事業者様の挑戦を支えています。更に場合によっては海外の宇宙保険マーケットに対しても私達が主導し、宇宙事業者様と一緒にプレゼンすることで、海外保険マーケットで再保険を手配し、リスクを分散させることでより一層困難な挑戦を支えることが出来ます。この調整が保険会社の非常に重要な役割となります。

なお、物理的な故障等だけでなく、ミッションがうまくいかない場合にも補償をするために各事業者様のミッションへの理解も深めることがとても大切になります。

今年注力したいビジネス

-新しく始まったビジネスやこれから注力していきたいビジネスを教えてください

舩越:私たちは保険そのものが社会インフラだと考えています。

宇宙空間では容易に修理ができず失敗確率が高いため、保険が非常に重要です。実は、私は三井住友海上には2023年1月に入社したばかりで、それまでは宇宙スタートアップで3年働いていました。

もともとはスタートアップ側なのでその視点で見ると、ヒトモノカネが足りない中で保険による下支えが重要だと身に染みて分かっているつもりです。その経験からも宇宙に挑戦する事業者様を支援していきたいと考えています。

-宇宙は難易度が高い領域のためリスクが高い中、なぜ貴社は挑戦するのでしょうか

土屋:土屋:将来的には月や火星など、多くの難易度の高いミッションが待ち受けています。私たちはさまざまな事業者様と対話し、ミッションについて十分に理解した上で、従来の物的損害に対するな補償だけでなく、ミッションの失敗などの非物的損害に対する補償も提供することで、今まで以上に挑戦者をサポートすることができると思っていますし、それができるかどうかが私たちの挑戦でもあります。  

SPACETIDEへ協賛を決めた理由

-今年もSPACETIDEへ協賛いただいた理由を教えてください

土屋:私は2023年3月までJAXAの新事業促進部に約3年間出向しており、Newspaceの波を見てきましたが、この波に乗らない理由はないと考えました。そして宇宙業界だけでなく、多様な業界と繋がっているSPACETIDEとの連携を通じて、我々として新たな宇宙領域のビジネスを作っていきたいと思ったのが一番の理由となります。

日本の宇宙スタートアップは第一世代が大きくなり、第二世代が育ってくるというフェーズに見えます。日本の強みを生かしたニッチな技術を持っていて、世界で勝負できる企業がいるなと感じています。

舩越:私はサッカーが好きなのでサッカーで例えると、日本がエムバペやメッシの様なスーパープレイヤーを擁するチームを目指す必要はなく、日本人の良さを活かせば強国にも十分に戦えると思っています。

ビジネスでも、強国と正面から当たらずとも戦える術を身につけ、また時には彼らと協力しながら、日本らしい宇宙産業を構築して、その中で新たなプレーヤーが育ってくると嬉しいですね。そして、我々保険会社がそれを支えることができたら一番の理想です。

土屋:SPACETIDEでは受け身の姿勢ではいけないなと思っています。

まずはSPACETIDEと一緒に宇宙産業を盛り上げる。その上で宇宙業界の皆さんをご支援できるか。そして、我々の事業に宇宙をどう落とし込むか。その方法をSPACETIDEと議論しながら創り上げていきたいと考えています。

SPACETIDE2023に参加する方へのメッセージ

-最後に、当日SPACETIDEに参加者する方へメッセージをお願いします

土屋:皆さまにとって保険のイメージは、自動車保険や火災保険など一般的なものが多いと思います。しかし、我々が新たなチャレンジを志す宇宙事業者様を積極的に支える存在であることを一般の方々にも広く知ってもらいたいと思います。

それこそが保険会社がこれからの時代を生き抜く存在価値であり、使命であると思っています。

みなさんが何か新しいチャレンジを始めようと思ったときに、まず我々に相談してみようと思っていただければ嬉しいですし、私たちは全力でその挑戦を支援させていただきます!

舩越:宇宙保険自体イメージしづらいものなので、SPACETIDEを通して宇宙保険の知名度を上げていきたいと思っています。
我々の宇宙保険のウェブページがあるので宇宙保険の雰囲気も見ていただけたらと思います。

※三井住友海上火災保険宇宙保険特設コンテンツhttps://www.ms-ins.com/special/space/

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