櫻原:我々は、実は「宇宙ビジネス」という事業を前提としてスタートをしているわけではないのです。もともとHondaがモビリティ開発を通して培ってきた、四輪、二輪等の技術アセットを使って新しい領域へのチャレンジを考えており、その中の一つが宇宙でした。
研究開発の内容は、「循環型再生エネルギーシステム」というJAXA様と共同で研究開発をしている領域と、「アバターロボット」と呼ばれる遠隔操作でロボットを動かす研究で、これもJAXA様と共同研究をしています。加えてロケットの研究開発も進めています。
櫻原:まず初めに循環型再生エネルギーシステムについてお話しします。我々は高圧水電解システムを研究開発しており、実環境での活用にもトライしています。一方、事業として大きくしていこうとしている燃料電池のシステムがあります。この二つの技術を組み合わせることによって、水を電気分解して水素・酸素をつくり、それを使って発電をして、水に戻して循環させるというエネルギーシステムが構成できます。この循環型再生エネルギーシステムに、我々がもともと持っている技術アセットを組み合わせれば、何らかの形で宇宙領域に貢献できるのではないかということでこの分野の研究をスタートしました。
ロボットについては、ご存知の通り我々は「ASIMO」という二足歩行のロボットを研究開発してきました。ロボットの制御技術は進化しており、遠隔操作をすれば、人が行くことが難しい宇宙空間などでの活動に活用できるのではないかということで、この領域の研究を進めてきました。
最後のロケット開発は、我々も未知の世界ではあったのですが、ロケットに使われている技術を調べていくと、燃焼、ターボポンプ、制御系の技術など我々が今まで培ってきた技術を活用できるのではないか。ロケットを打ち上げることに対しても、我々の持っている自動車技術やF1などで培ってきた特殊な技術を含めて活用すれば可能性があるのではないか、そう思って研究をスタートしました。
櫻原:宇宙は真空や放射線の影響など、非常にチャレンジングな場で地上では考えられないことがたくさん起こります。宇宙に対しての技術が出来上がった暁には、色々な分野に発展させていけるのではないかと思い、この宇宙という領域を選びました。
加えて、我々はもともと、陸上、海上、空を研究開発のフィールドとしてきて、最後に残されたのが宇宙領域で、研究開発分野としてのニューフロンティアでもありました。
櫻原:真空、高温、低温、放射線については、設備自体の問題もありますし、そういう面も含めて難しさがありますね。ただ、技術という意味ではやはり共通する部分もたくさんあると感じています。
櫻原:現状はまだ研究開発段階なので、その出来高を見ながら将来の事業化を検討して行く予定です。そもそも我々の部署も4月に発足したばかりなので、今後これらの技術を横目で見ながら、これは将来事業化につながっていくかというところの検討を進めていく形になると思います。
宇宙の技術として独創的で価値の高い技術やソリューションを出していけたらと思っていますが、
まだまだ研究が始まったばかりなので、その全体像をどう描いていくかというところが我々に課せられているミッションだと思っています。
櫻原:SPACETIDEは、日本国内だけではなく、海外の方も参加されるカンファレンスになっていますよね。そのような場を提供され、展開されているので、我々としては宇宙業界の方とつながるチャンスだと考えています。将来のロードマップを描いていくうえでも、このような場に入ることは非常に良いことだと思い、今年も協賛を決めさせていただきました。
櫻原:そうですね。どの業界でもそうだと思うのですが、業界の中に入って行かないとなかなか自分たちの立ち位置もよく分からないですし、情報が上手くキャッチアップできないのです。SPACETIDEは日本国内だけでなく、海外にも開かれたカンファレンスなので、そういう所に入っていろいろな人とコミュニケーションをとっていくことが、非常に重要なことではないかと考えています。
宇宙業界の人たちが一堂に会して、いろいろなネットワークが形成されると伺っているので、とても楽しみにしています。
櫻原:宇宙関連の技術開発に取り組んで日が浅いものですから、実際にこれが通用するのかどうかも含めて検証していきたいと思います。宇宙開発戦略室はできたばかりで、はっきりとこういうことをするのだ、ということが言えない状況ですが、我々の技術や経験を生かして、少しでも宇宙業界に貢献していきたいと思っています。
SPACETIDEを通して、さまざまな方々と、ネットワーキングなどで繋がっていきたいのでよろしくお願いします。